最近は、中古着物を購入し着物を楽しむ方も増えてきました。
また、お母さまやお祖母さまから着物を譲り受けた、という方も多いのではないでしょうか。
そんなときによくご相談いただくのが、**「着物のサイズ直し」**です。
「気に入っているけれど、裄が短い」
「身巾が合わなくて着にくい」
「身丈が短いけれど、長くすることはできる?」
洋服と違い、着物はある程度の寸法調整ができるように仕立てられています。
ただし、どんな着物でも希望のサイズまで大きくできるわけではありません。
また、裄だけを直す場合と、裄・身巾・身丈など複数箇所を直す場合では、おすすめする直し方も変わってきます。
場合によっては、部分的な寸法直しを重ねるよりも、一度着物を解いて洗い張りをし、マイサイズに仕立て直した方が費用を抑えられることもあります。
今回は、お譲り着物や中古着物で特にご相談の多い**「裄」「身巾」「身丈」**の3つについて、どこまでサイズ直しができるのか、呉服屋の目線から分かりやすく解説します。
そもそも着物はどこまでサイズ直しできる?
まず知っておいていただきたいのが、着物のサイズ直しには限界があるということです。
着物は反物から仕立てる際、生地をすべて切り落としてしまうのではなく、余った部分を縫い込んで仕立てていることがあります。
そのため、縫い込みに生地が残っていれば、その分を使って寸法を大きくできる可能性があります。
反対に、縫い込みがほとんど残っていなければ、希望する寸法まで出せないこともあります。
つまり、
「今の着物が何cmあるか」だけでは、何cmまで直せるかは判断できません。
実際にどれくらい生地が中に縫い込まれているかを確認することが大切です。
① 裄直し|袖巾だけ直す?肩巾も直す?
お譲り着物や中古着物で、特に多いご相談が裄直しです。
「手が出すぎる」
「昔の着物だから裄が短い」
と感じる方も多いと思います。
裄は、肩巾+袖巾で決まります。
そのため「裄を長くする」といっても、直し方は一つではありません。
袖巾だけを直す場合
現在の肩巾に問題がなく、袖巾を広げるだけで希望する裄に近づけられる場合は、袖巾だけを直します。
肩巾と袖巾の両方を直す場合
袖巾だけでは希望する裄にならない場合や、全体のバランスを考えて調整する必要がある場合は、肩巾と袖巾の両方を直します。
同じ「裄直し」でも、どこまで手を入れるかによって直し方も費用も変わります。
最大でどこまで裄を出せる?
裄を長くしたいとき、もう一つ知っておきたいのが反物そのものの幅です。
基本的な考え方として、着物の最大裄は、
反物の幅 × 2 − 縫い代
が目安になります。
たとえば、いくら縫い込みに生地が残っていても、もともとの反物の幅以上に肩巾や袖巾を広げることはできません。
特に昔の反物は、現在のものと比べて幅が狭いものもあります。
そのため、身長が高い方や裄の長い方がお譲り着物を着る場合は、「生地が残っているか」だけでなく「反物自体の幅がどれくらいあるか」も重要になります。
また、裄を出したとき、これまで縫い込まれていた部分に色の差や折り筋が出ることもあります。※その場合は、筋ケシ・色補正等の別途料金がかかります。
そのため、
「寸法上は出せる」=「きれいに出せる」
とは限りません。
実際の状態を確認しながら、どこまで出すかを判断します。
② 身巾直し|体型に合わせて調整できます
次に多いのが身巾のお直しです。
「前がきれいに合わない」
「着付けをしても身巾が足りない」
「母の着物を着てみたら、サイズが合わなかった」
など、譲ってくださった方との体型の違いによって、着にくさを感じることがあります。
着物の身巾は、主に前巾・後巾などを調整して、その方の体型に合わせていきます。
ただし、身巾も裄と同様、縫い込みとして残っている生地の量によって、どこまで広げられるかが変わります。
また、身巾のお直しは裄直しよりも手を入れる範囲が大きくなることがあります。
そのため、ほかにも直したい箇所がある場合は、部分直しを続けるのか、一度仕立て直すのかを比較した方がよいでしょう。
③ 身丈直し|短い着物は長くできる?
「お母さんの着物を着たいけれど、私の方が背が高い」
そんなときに問題になるのが身丈です。
着物は多少身丈が短くても、着付けの仕方や腰紐の位置などによって着られる場合があります。
そのため、身丈が少し短いからといって、必ず直さなければならないわけではありません。
一方、大きく身丈が足りない場合には、着物の中に残っている生地を使って身丈を出せる可能性があります。
ここでも重要なのは、生地がどれだけ残っているか。
着物によって残っている生地の量は違うため、「○cmまでは必ず伸ばせます」と一律には言えません。
裄・身巾・身丈、3か所直すなら一度見積もりを
ここは、お譲り着物や中古着物の寸法直しを考えるときに、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。
たとえば、
裄も直したい。
身巾も直したい。
身丈も直したい。
となった場合。
それぞれを部分直しとして依頼すると、直す箇所ごとに加工代がかかります。
そのため、3か所以上のお直しが必要になる場合は、一度すべて解いて洗い張りをし、マイサイズに仕立て直した方が、結果的に安くなることがあります。
「仕立て直しの方が大がかりだから高そう」と思われるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
部分直しの合計金額と、洗い張り+仕立て直しの金額。
両方を比較してから決めるのがおすすめです。
古い着物は「ほどけるか」も大切です
もう一つ、お譲り着物や中古着物だからこそ注意したいことがあります。
それが、生地そのものの状態です。
長い年月が経った着物の中には、見た目には問題がないように見えても、生地が弱っているものがあります。
その場合、寸法直しや仕立て直しのために縫い目をほどいた際、生地が裂けてしまうことがあります。
特に古い着物は、
「寸法的に直せるか」だけではなく、「生地が直しに耐えられる状態か」
という確認も必要です。
せっかく受け継いだ大切な着物だからこそ、いきなりほどくのではなく、まずは状態を確認してから直し方を決めることをおすすめします。
マイサイズ=全部直す、ではありません
お譲り着物だからといって、最初からすべて自分の寸法に直す必要はありません。
実際に着てみると、
「裄だけ直せば十分」
「身丈は少し短いけれど、着付けで対応できる」
「このくらいなら今の寸法のまま着られる」
ということもあります。
反対に、何か所も直すのであれば、一度きちんとマイサイズに仕立て直した方がよい場合もあります。
大切なのは、直せるところを全部直すことではなく、その着物を気持ちよく着るために、どこまで直す必要があるかを考えること。
お母さまやお祖母さまから受け継いだ着物も、中古で見つけたお気に入りの一枚も、寸法が合わないという理由だけで諦める必要はありません。
福岡・呉服の横尾でも、お譲り着物や中古着物の寸法直し、洗い張り、仕立て直しのご相談を承っています。
「この着物、私のサイズにできますか?」
そんなご相談だけでも大丈夫です。
実際の着物を確認しながら、部分直しで十分なのか、洗い張りをして仕立て直した方がよいのかも含めてご案内いたします。
